調査研究の計画概要(2025年度)
研究課題名 | 「親性」生成研究にもとづく「協同子育て実践学」の構築と展開 |
---|---|
研究代表者 | 弘田 陽介 大阪公立大学文学研究科 教授 |
研究期間 |
2025年4月1日~2027年3月31日(2年間) うち2025年4月1日~2026年3月31日の2025年度分を実施 |
研究目的 |
子育てはもともと社会で共同化された営みであった。しかし近代以降の歴史変化によって、家庭内の私的で個的な営みとなり、近年では知識や経験、援助を得る術を持たない孤立した養育者による子育ての諸問題(マルトリートメントなど)が顕在化している。 一方、子育て支援に関わる研究は、各学問分野の視座からの域をでていない。従前の教育学や保育学は、子ども研究や子育て支援の研究で応えてきたが、子どもや保護者、他の社会参画者を含む包括的な視点が希薄である。社会的養護としての子育て支援においても虐待防止や里親開拓の施策を除き、当事者以外の人々を巻き込む観点が弱い。行政の施策でも、養育者の生涯発達という長期的視点は見られず、妊産婦の保健指導や発達障害児童保護者への対処等のピンポイントのケアにとどまっている。イギリスやフィンランドなど成果をあげている海外の統合的な教育・福祉政策が紹介され、学術機関や行政と市民の連携の喫緊性が唱えられてはいるものの、実践的解決に向けては未だ見るべきものはない。本研究はこうした社会的・学術的背景への切実な危機意識に促されたものである。 |
研究計画(要約) | 私たちは切実な危機意識に促され、養育者やその周囲の社会成員が、それぞれに成熟するという生涯発達の観点から、すでに母性・父性を包摂する「親性(おやせい)」に関する包括的な基礎研究を行ってきた。新規本研究では、教育学・歴史学・哲学の理論研究と、生涯教育学・保育学・心理学・家庭科教育学・霊長類学の領域研究とを融合させ「協同子育て実践学」を構築する。それを家庭・学校・諸施設などの実践基盤で「親性」を育むアクションリサーチを行い、全社会成員の「親性」生成の新たな子育て実践モデルを提示する。併せて本研究の成果を、大学も含めた諸学校の教育課程に組み込み、本研究を実践的に展開する。 |